ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA LL-31B

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和歌山県にお住まいのJ.F.さんからMartin HD-28 customとYAMAHA LL-31Bのリペアご依頼をいただきました。YAMAHA LL-31Bはフレットすりあわせ、弦周りのTUSQ化、およびピックガード交換を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、J.F.さんからとても温かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口 様

おはようございます。和歌山のJ.F.です。
土曜日に無事ギターを受け取りました。
意外に早くてびっくりしました。

Martin HD-28
これはもう別のギターかっていうぐらい良くなりました。
他の方も表現してるようにチューニングの時点で「あ、よくなってる」と思いました。
余韻も多くなったし、弦一つ一つ良い音が出るようになりました。

やはり部分リペアじゃなくトータルが良かったのだと改めて思いました。
3弦4弦が気持ち良いですね。ティーン♪と気持ちよくなる。
ハンマーリングの音もポィ~ン♪と音が減衰せず鳴るような気がします。
5・6弦も篭ってないです。はっきりした音になりました。
しばらく弾き入ってました。もう一台のマーチンが見劣りします。
愛着がわき弾くのが楽しくなりました。ありがとうございました。

YAMAHA LL-31B
このギターはピックガードが一番の悩みで音はあまり考えていませんでしたが、いやいや、すごく音量が上がってるじゃないですか。
反応が早くなった?立ち上がりっていうのかな?すごいです。
バーンっていう感じが強くなった気がします。もともとそういう性格のギターなんでしょうけど。
裏板の振動もすごいです。ナット・サドルでこんなに違うのかと思いました。
ピックガードはイメージの色とは違いましたが、これはこれでカッコいいですね。
前のL-31Aとそっくりになったような気がします。
サウンドホール周りも綺麗になってた。やっぱり傷ではなくピックの樹脂の溶けたものが付いてたんですね。
ピックとの相性も見ながら大事に使っていきたいと思います。
ありがとうございました。

いろいろ変更したりしてお手数かけましたが、お願いしてよかったと思っています。
久しぶりに指が痛くなるまで弾きました。あっという間に時間が経ってました。
ありがとうございました。

J.F.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

両ギターとも素晴らしい音色を奏でてくれるようになりました。
リペア後のギターにご満足いただけて私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

Martin HD-28 customは見積もり段階でネックリセット実施をご提案するかどうか迷いましたが、サドル高を確保した上で本来のギターの音色と演奏性を実現することができて本当に良かったと思います。
ボディとネックの一体感を向上するとともに、適正弦高を確保できたことが今回のリペアの効果だと思います。

YAMAHA LL-31Bは弦周りをTUSQ化することによってボディに弦の振動が効率的に伝搬するようになり、箱鳴り感が大きくアップしました。本来にギターの潜在能力を引き出すことができて良かったと思います。

これからも元気いっぱいのギター達とともに素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

7.サドル高の切り出しを終えました。
8.サドル上部にピーク位置を書き写します。

9.サドルピーク位置を削りだしていきます。
10.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

11.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
12.ブリッジピン穴加工を終えました。

13.サドルを取り付けました。
14.完成したブリッジとサドルです。

ピックガード交換

1.オリジナルピックガードです。TOR-TIS素材のものと交換します。
2.端部分からナイフを挿入して行きます。

3.トップ板を傷つけないようにゆっくりナイフを進めていきます。
4.ピックガードが取り外せました。

5.古い接着シートの残りが残っています。
6.トップ板をクリーニングしました。

7.オリジナルを元にTOR-TIS素材を切り出していきます。
8.オリジナルピックガードに仮付けしました。

9.周囲を削っていきます。
10.TOR-TIS素材は常温では固くもろいので慎重に削っていきます。

11.削り出したピックガードより少し大きめに両面接着シートを切り出しました。
12.接着面に貼った後、周囲をカットします。

13.位置決めを行っています。
14.交換完了しました。ピックガードを交換するとギターの表情が変わりました。